スーパーやコンビニで食品を手に取ったとき、「原材料名」や「/(スラッシュ)」の後ろに書かれている添加物表示を、どれくらい意識して読んでいるでしょうか。
「天然だから安心」「合成は体に悪い」といったイメージを持っている方も多いかもしれませんが、実は現在の日本の食品表示制度では、「天然」「合成」という区分は必ずしもそのまま表示されていません。
この記事では、日本の食品表示制度を踏まえながら、「天然・合成の違い」をどう理解すればよいのか、食品表示の読み方の基本とあわせて解説します。
1. そもそも「食品添加物」とは?
食品添加物とは、食品の製造過程や保存のために使用される物質で、日本では食品衛生法に基づいて安全性が評価され、使用が認められたものだけが使われています。
用途はさまざまで、例えば以下のようなものがあります。
・色をつける(着色料)
・味を調える(甘味料、調味料)
・保存性を高める(保存料)
・品質を安定させる(乳化剤、増粘剤)
重要な点は、「添加物=危険」ではなく、使用基準や使用量が法律で厳密に管理されているということです。
2. 「天然」と「合成」は法律上どう扱われている?
かつて日本では、食品添加物を
・天然添加物
・合成添加物
といった区分で扱っていた時代がありました。しかし現在の制度では、この区分は原則的に表示には使われていません。
現在の日本の食品表示では、
・指定添加物(国が安全性を確認し指定したもの)
・既存添加物(長年の食経験がある天然由来のもの)
・一般飲食物添加物(食品そのものを添加物として使うもの)
・天然香料
といった分類が用いられています。
つまり、「天然か合成か」よりも、どの制度区分に基づいて使用されているかが重視されているのです。
3. 原材料表示で「天然・合成」はどこで分かる?
実は、食品表示を見ても「天然着色料」「合成着色料」とは書かれていません。代わりに、物質名や用途名で表示されます。
・着色料(カロチノイド)
・着色料(紅麹)
・着色料(赤102)
これらを見て、「天然か合成か」を一目で判断するのは困難です。例えばカロチノイド色素は、ニンジンカロテンや藻類カロテンなど自然界に存在する素材由来のカロテンもありますが、化学合成や微生物発酵などにより作られているβカロテンなどもあります。
4. 「無添加」「天然使用」という表示の注意点
店頭では「無添加」「添加物不使用」「天然由来」といった表示をよく見かけます。これらは一見すると安心感を与える言葉ですが、日本の食品表示制度においては、表示の意味を正しく理解することが重要です。
まず、「無添加」という言葉についてですが、日本の法律には「無添加」という用語の明確な定義はありません。そのため、事業者がどの添加物を使っていないのかを明示しないまま、「無添加」とだけ表示すると、消費者が「一切の食品添加物を使用していない」と誤解するおそれがあります。実際には、「保存料無添加」「着色料無添加」など、特定の添加物のみを使用していないケースであっても、「無添加」と表現されてきた例がありました。
こうした誤認を防ぐため、消費者庁は2022年に「食品添加物の不使用表示に関するガイドライン」を策定しました。このガイドラインでは、「無添加」や「○○不使用」と表示する場合、何を使っていないのかを具体的に示す必要があるという考え方が示されています。また、添加物を使用していないことが、あたかも「安全」「健康的」といった優れた性質であるかのように受け取られる表示についても、注意が必要とされています。
次に、「天然由来」や「天然使用」という表現についてです。「天然」と聞くと、「安全」「体にやさしい」といった印象を持ちやすいですが、天然由来であること自体が安全性を保証するわけではありません。天然の物質であっても、摂取量や使用方法によっては健康への影響が生じる可能性があります。そのため、日本では食品添加物について、天然・合成の別を問わず、安全性評価が行われ、使用基準が定められています。
消費者庁のガイドラインでも、「天然」「自然」といった言葉が、食品添加物を使用していない、あるいは安全性が高いと誤認させる形で使われることに対して、慎重な対応が求められています。たとえ「天然由来」と表示されていても、実際には精製・加工された添加物である場合もあり、表示だけで単純に判断することはできません。
食品表示を見る際には、「無添加」「天然」という言葉だけに注目するのではなく、原材料名や添加物欄をあわせて確認することが大切です。消費者庁のガイドラインは、こうした誤解を減らし、消費者が正しく選択できるようにするための指針です。表示の言葉を鵜呑みにせず、その意味を理解する姿勢が、安心につながります。
5. まとめ
「天然」「合成」という言葉は分かりやすい一方で、現在の日本の食品表示制度では、必ずしも正確な判断基準にはなりません。大切なのは、法律に基づいて安全性が確認され、適切に表示されているかどうかです。
食品表示を少し意識して読むだけで、食品との付き合い方は大きく変わります。ぜひ次回のお買い物で、原材料表示をじっくり眺めてみてください。
おことわり
