セリ科植物(ニンジンとセロリ)

ハーブの一種として知られているアンゼリカは、セリ科シシウド属に分類される植物です。

セリ科といってもピンと来ないかもしれませんが、よく知られているのはニンジンやセロリ、パセリなどの野菜がセリ科の植物です。多くの小さな花からなる、傘のような花序を持っていること、また独特の香りや苦みをもつことがセリ科の特徴です。また、セロリなどがわかりやすいですが、茎の中が空洞なのも特徴の一つです。

一方シシウド属は学名ではAngelica、つまりアンゼリカのことを示しています。シシウド属はセリ科の中でも高さが2mにも達し、セリ科の特徴的な傘のような花序を持つ大型の多年草です。属名にもなっているシシウドは日本では根を独活(ドッカツ)として薬用に用いられるほか、同属としては健康野菜として知られているアシタバ(明日葉)、薬用植物としていずれも根を用いるトウキ、ヨロイグサなどがあります。

 Angelica pubescens:シシウド(猪独活)(根を用いる(独活))
 Angelica keiskei:アシタバ(明日葉)
 Angelica acutiloba:トウキ(根をトウキ(当帰)として用いる)
 Angelica dahurica:ヨロイグサ(根をビャクシ(白芷)として用いられる) 
  

セリ科植物の特徴ー小さな花を傘状にたくさんつける(写真はニンジン)

ガーデンアンゼリカ
 欧州の中でも高緯度帯や山地に自生するガーデンアンゼリカは別名をセイヨウトウキと言われており、春播きで翌年、秋播きの場合は翌々年に花をつける2年草です。根を用いる場合は通常、収量を得るために2年間かけて栽培を行います。学名はAngelica archangelica L.、又はArchangelica officinalis (Monech) Hoffm.ですが、それに類似した亜種としてAngelica litoralisと分類されている品種があり、味が異なる(前者の方がまろやか、後者の方が刺激性が強い)とされています。
 なお、わざわざ「セイヨウ」となっているのは、上述しているように日本では同じシシウド属でも漢方素材としても知られているトウキ(当帰:Angelica acutiloba※)という別の種があり、それと区別するためです。

 アンゼリカは直立した茎を持ち、しばしば紫色になることがあります。
 背丈は栽培時には3mに達することもありますが、自生の場合は50~100cm程度となります。
 アンゼリカの生育時には、地上部、地下部双方から特有の芳香を放つことが特徴です。
 根の形は自生の場合は蕪(カブ)のような形であるのに対して、栽培時には短く、不定根が多くみられるという違いがみられます。根の中身はわずかに黄味を帯びた白色ですが、乾燥させると黄味が強くみられるようになります。

 アンゼリカの花は、茎の先に20~40個の小さな花が集まり、直径が15cm以上にも達する花序が見られるのが大きな特徴です。7~8月に開花し、その後黄色の実をつけます。

 ※当帰(トウキ):アンゼリカと同属でよく知られている植物として当帰(トウキ)があげられます。日本にある当帰には、いわゆるAngelica acutiloba Kitagawaとホッカイトウキ(北海当帰)と呼ばれるA. acutiloba Kitagawa var. sugiyamae Hikino、またミヤマトウキA.acutilba var. iwatensis Hikinoのなどから得られた根の部分を示しています。当帰は薬局方にも収載されていますが、そこで用いられている当帰はかつては奈良県の大深地方でミヤマトウキを栽培化したオオブカトウキ(大深当帰)を示していました。現在は大深当帰は栽培されていないため、直近の薬局方では当帰の由来植物としては「トウキ(A.acutiloba Kitagawa)またはその他近縁植物」と記載されるようになっています。