ブドウ

海外でアントシアニン色素と言ったらこれ

ブドウ果皮色素は、ブドウ(Vitis vinifera)の中でも果皮の色が赤紫色の品種から得られる色素です。

1. 概要と化学構造

  • 起源:アメリカブドウ(Vitis labrusca L.)又はブドウ(Vitis vinifera L.)
  • 主成分:アントシアニン(アシル化アントシアニンなど)

    ブドウには多種のアントシアニンが含まれており、シアニジン、ペオニジン、デルフィニジン、ペチュニジン、マルビジンの5種類のアグリコンに対してそれぞれ3位、3位と5位に糖がついたり、パラクマル酸などの有機酸が結合したアシル化アントシアニンが含まれています。
    またブドウの品種によっても組成が異なり、例えばヨーロッパ系の品種はグルコースとそのエステルが主体であるのに対してヨーロッパ種とアメリカ種の交雑品種は3-グルコシドや3,5-グルコシドが含まれるなどの違いがみられます。 
    ヨーロッパ系品種(Vitis vinifera L.):カベルネ・ソービニオン(Cabernet Sauvignon)、メルロー(Merlot)、ピノ・ノワール(Pinot Noir)など
    ヨーロッパ系・アメリカ系交雑品種(Vitis Labrusca L.):コンコード(Concord)、デラウェア(Delaware)、マスカット・ベリーA(Mascat Bailey A)、ナイアガラ(Niagara)など

2. 特徴及び用途

  • 発色域:pH 2〜6で赤~暗赤色、pH 7以上で青緑に変色
  • 溶解性:水溶性、極性アルコールに可溶、油脂に不溶
  • 熱安定性:アントシアニン色素の中では中程度
  • 光安定性:アントシアニン色素の中では中程度
  • 金属との相互作用:鉄・銅などとの共存で濃色化/沈殿可能性あり(アントシアニン系色素共通の特徴)
  • 用途
    •  漬物(紅しょうが、桜漬け、しば漬けなど)
    •  菓子類(ゼリー、キャンディ、グミ、洋生菓子)
    •  飲料(清涼飲料水、ビネガードリンク、栄養ドリンク、アルコール飲料)
    •  乳製品(ヨーグルト、フィリング)や冷菓(アイス、氷菓)
  • その他
    • ブドウ果皮色素は海外では多く使われていますが、日本では赤キャベツ色素や紫サツマイモ色素など、似た色調でより安定性が高い色素があるため、海外ほど多くは使われていません。

3. 法規制・表示

    • 日本:既存添加物
      • 表示名称例:ブドウ果皮色素、エノシアニン、アントシアニン、ブドウ色素、アントシアニン色素、着色料(アントシアニン)
      • 使用制限:以下の食品には使用できません。こんぶ類、食肉、豆類、野菜類、わかめ類(加工品は除く)、鮮魚介類(鯨肉を除く)、茶、のり類
    • INS番号:163 Anthocyanins / 163(ii) Grape skin extract
    • EU:E163 Anthocyanins/Grape color extract
    • 米国:vegetable juice color扱いとされている場合もあります
    • その他:
      色素の原料となるブドウ果皮はワイン粕なども使われるため、ワインの醸造時に酸化防止剤として用いられる二酸化硫黄が色素に残存するおそれがあることから、日本では残留二酸化硫黄(亜硫酸)の規格が設けられています。

海外では各国の着色料規制により使える食品や添加量が決められている場合が多いため、ここに記載があっても使えないことがあります。

参考文献:
● 津久井亜紀夫、寺原典彦編著、アントシアニンと食品、建帛社
● Lei Z et.al., "Phenolic Contents and Compositions in Skins of Red Wine Grape Cultivars among Various Genetic Backgrounds and Originations", Int J,Mol Sci.,13(3),3492-3510 (2012)
● Vívian M B. et.al., "Anthocyanins: optimisation of extraction from Cabernet Sauvignon grapes, microcapsulation and stability in soft drink", Int J. Food Sci Tech., 46(1),186-193(2011)


おことわり

本サイトに掲載している内容は、筆者の知識・経験および公開情報をもとに作成したものであり、できる限り正確な情報提供に努めていますが、その内容の正確性・信頼性・最新性を保証するものではありません。
本サイトで提供する情報は、あくまで一般的な情報共有を目的としたものであり、専門的な助言や指導に代わるものではありません。
本サイトの内容を利用・参考にしたことによって生じたいかなる損害・不利益についても、筆者は一切の責任を負いかねます。あらかじめご了承ください。

また、掲載内容は予告なく変更または削除することがあります。