国内のアントシアニン色素の中では最もよく使われている
アカキャベツ色素は、アブラナ科キャベツの赤・紫変異体から抽出される天然アントシアニン色素で、多様なpHに応じて鮮やかな色変化を示し、食品・飲料分野で幅広く利用されています。
1. 色素の概要と化学構造
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起源:キャベツ(Brassica oleracea var. capitata L.)の葉
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主成分:アントシアニン系色素の一種である シアニジンアシルグリコシド
アカキャベツは16世紀前後に結球性のキャベツから変異して出現したとされています。葉の色が紫色をしているほかに、普通のキャベツよりの小ぶりで密に硬く結球しているのが特徴です。生食用のキャベツ「中生ルビーボール」「ネオルビー」が知られていますが、色素用には専用の品種が使われています。
アカキャベツには約11種類のアントシアニンが含まれます。このうち2種類のアシル化アントシアニン、シアニジン 3-パラクマロイルソホロシド-5-グルコシドとシアニジン 3-シナボイルソホロシド-5-グルコシドが全体の約50%弱を占めています。その他にはパラクマル酸やフェルラ酸、シナピン酸が2個結合したジアシル化アントシアニンなどが含まれています。
2. 特徴及び用途
- 発色域:pH 2〜6で赤紫色、pH 7以上で青緑に変色
- 溶解性:水溶性、極性アルコールに可溶、油脂に不溶
- 熱安定性:アントシアニン色素の中では比較的高い(特に酸性条件下)
- 光安定性:アシル化アントシアニンが主体のため、アントシアニン色素の中では比較的高い
- 金属との相互作用:鉄・銅などとの共存で濃色化/沈殿可能性あり(アントシアニン系色素共通の特徴)
- 用途
- 漬物(紅しょうが、桜漬け、しば漬けなど)
- 菓子類(ゼリー、キャンディ、グミ、洋生菓子)
- 飲料(清涼飲料水、ビネガードリンク、栄養ドリンク、アルコール飲料)
- 乳製品(ヨーグルト、フィリング)や冷菓(アイス、氷菓)
- その他
- アカキャベツ色素もアブラナ科植物由来の色素ですが、アカダイコン色素ほどアブラナ科独特の臭いは少ないため、様々な食品に使われています。
3. 法規制と表示
- 日本:一般飲食物添加物
- 表示名称例:アカキャベツ色素、ムラサキキャベツ色素、野菜色素、アントシアニン色素、着色料(アントシアニン)
- 使用制限:以下の食品には使用できません。こんぶ類、食肉、豆類、野菜類、わかめ類(加工品は除く)、鮮魚介類(鯨肉を除く)、茶、のり類
- INS番号:163(v) Red cabbage colour
- EU:E163 Anthocyaninとして分類
- 米国:vegetable juice color扱いとされている場合もあります
海外では各国の着色料規制により使える食品や添加量が決められている場合が多いため、ここに記載があっても使えないことがあります。
参考文献:
● 津久井亜紀夫、寺原典彦編著、アントシアニンと食品、建帛社
● Roberto M. et al., "Anthocyanins: A Comprehensive Review of Their Chemical Properties and Health Effects on Cardiovascular and Neurodegenerative Diseases", Molecules, 25(17), 3809(2020)
● Nazila G. et.al., "Red cabbage anthocyanins: Stability, extraction, biological activities and applications in food systems",Food Chem.,365,130482(2021)

