アントシアニン系色素の中の変わり種
アカダイコン色素は、果肉が赤や紫色のダイコンから得られるアントシアニン色素の一種で、アントシアニン系色素の中では珍しい朱色系の色調を持っています。
1. 概要と化学構造
• 起源:アブラナ科ダイコン属 Raphanus sativus の赤紫色の根(赤ダイコン)から抽出
• 主成分:アントシアニン系色素の一種である ペラルゴニジンアシルグルコシド
一般的なダイコンの根部は白色ですが、アントシアニンを多く含むアカダイコン(赤紫大根)系統では10種類以上の色素成分が検出されます。特徴として、ペラルゴニジン系のラファニン(ペラルゴニジン-3-ジグルコシド-5-グルコシド)がフェルラ酸やカフェ酸、パラクマル酸などの芳香族有機酸でアシル化されたアシル化アントシアニンを主成分の場合は赤ダイコンなのに対して、シアニジン系のシアニジン 3-ソホロシド-5-グルコシドがパラクマル酸やフェルラ酸でアシル化されたアシル化アントシアニンが主成分の場合は紫ダイコンになります。
2. 特徴及び用途
- 発色域:pH 2〜6で朱赤色、pH 7以上で青緑に変色
- 溶解性:水溶性、極性アルコールに可溶、油脂に不溶
- 熱安定性:アントシアニン色素の中では比較的高い(特に酸性条件下)
- 光安定性:アシル化アントシアニンが主体のため、アントシアニン色素の中では比較的高い
- 金属との相互作用:鉄・銅などとの共存で濃色化/沈殿可能性あり(アントシアニン系色素共通の特徴)
- 用途
- 漬物(紅しょうが、桜漬け、しば漬けなど)
- その他
- アントシアニン系色素の中では合成色素(赤色102号)に近い朱色に近い色調を示します。
- アカダイコン色素はアブラナ科植物特有の香り(いわゆるダイコン臭)があるのが難点ですが、メーカーにより育種や脱臭技術など用途拡大に向けた取り組みが行われています。
3. 法規制と表示
- 日本:一般飲食物添加物
- 表示名称例:アカダイコン色素、野菜色素、アントシアニン色素、着色料(アントシアニン)
- 使用制限:以下の食品には使用できません。こんぶ類、食肉、豆類、野菜類、わかめ類(加工品は除く)、鮮魚介類(鯨肉を除く)、茶、のり類
- INS番号:163(viii) Red radish colour
- EU:E163 Anthocyaninとして分類
- 米国:vegetable juice color扱いとされている場合もあります
海外では各国の着色料規制により使える食品や添加量が決められている場合が多いため、ここに記載があっても使えないことがあります。
参考文献:
● 津久井亜紀夫、寺原典彦編著、アントシアニンと食品、建帛社
● MÓNICA G. M. et.al., "Characterization of Red Radish Anthocyanins", Journal of Food science,61(2),322-326(1996)
● Takashi O. et.al., "Acylated anthocyanins from red radish (Raphanus sativus L.)", Phytochemistry,60(1),79-87(1996)

